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匣(ハコ) 【魍魎の匣】 [映画日記<2008年>]

「魍魎の匣」を見たよ!

1952年。
少女バラバラ殺人事件が巷を賑わせている。
カストリ誌出版社に勤める鳥口(マギー)は、普段は不条理小説を書いていたが、糊口をしのぐ為、ペンネームでたまにカストリ誌にも記事を書いている関口巽(椎名桔平)に原稿の依頼をしていた。
その頃、探偵榎木津礼二郎(阿部寛)は、引退した女優、柚木陽子(黒木瞳)に娘の行方の捜査を依頼されていた。
その娘加菜子(寺島咲)は、大財閥の柴田家の息子との間に出来た子だった。
ところが、加菜子が電車に轢かれる事故が起きる。
加菜子はなんとか命を取り留めるが、陽子は加菜子を、美馬坂研究所に移す。
美馬坂(柄木明)は戦時中、身体のパーツを取替えできる、不死の兵士を作る人体実験をして、その後、ひっそりの研究を続けていた。
一方、バラバラにされた少女たちは、みな、親が新興宗教御筥様の信者である事が分かる。
関口は、一人の小説家に会っていた。
久保竣公(宮藤官九郎)。
彼は、終戦間近。戦場で榎木津が出会った男。
御筥様、柚木陽子、加菜子、久保竣公、美馬坂研究所。
そして、榎木津、関口、刑事の木場(宮迫博之)、鳥口、
みなそれぞれ抱えた、事件の真相を暴こうと、一人の男の下に集まっていた。
中禅寺秋彦(堤真一)。
晴明神社の宮司で古書店「京極堂」の店主で、陰陽師。
中禅寺が動く時、事件の真相と、それを取り巻く“魍魎”の正体が、明かされる。
果たして、真相は暴かれ、中善寺は“憑き物”を落とせるのだろうか・・・

京極堂シリーズ、第2弾。
前作「姑獲鳥の夏」から、監督が変わっているね。
それと、地味に、関口のキャストが変わってる。

京極夏彦の原作は、ものすごく長いけど、登場人物も多くて、私が書くあらすじには、全員書ききれない。
上記以外でも、木場の刑事の後輩青木(堀部圭介)や、中禅寺の妹敦子(田中麗奈)や、榎木津の助手和虎(荒川良々)、榎津の親戚今出川(笹野高史)、柴田財閥の弁護士増岡(大沢樹生)、陽子と加奈子の監視役雨宮(右近健一)、加菜子の友達頼子(谷村美月)、教祖(大森博史)、中禅寺の妻千鶴子(紺野美沙)、関口の妻雪絵(篠原涼子)などなど。
書ききれないし。

今作、魍魎の匣は、京極堂シリーズの中で、一番に好きな作品なのだけど、読んだのが結構前で、正直、忘れていたな。
なので、原作から映画化に際し、変更ないし削除された部分が、非常に分かりにくかった。
それは映画を楽しむにはよろしいのだけど、原作ファンの立場からすると、ちと申し訳ない気分。

「姑獲鳥の夏」に比べると、映画としての面白さ、エンターテイメイトさは、アップしていたように思う。
それは監督の差でもあるのだろうと思うのだけど、
「姑獲鳥の夏」の雰囲気は、かなり原作に近い感じに作られていたのに対し、今作「魍魎の匣」は、原作を考えてると、各キャラクターの個性は、映画向きに作られていたと思うよ。
よりエンターテイメント化してたと言うか。
良い悪いじゃなくってね。
強烈な原作ファンには、中禅寺はあんなにフレンドリーな2枚目半じゃない、とか、関口は対人恐怖症だからあんなに流暢にしゃべれまい、とか、榎木津が普通の人すぎる、とか、まぁ、いろいろ出てくるんじゃないかな。

でも、映画として見れば、結構いい方に作用したんじゃないかとも思うな。
元々、原作が、ものすっごいマニアックだから。
小説よりも、不特定多数に見てもらわなきゃならない映画であけば、こういうマイナーチェンジも、悪くないって思っちゃったんだけど。
どうかしらね。

今作、ロケハンはものすごく頑張ってたね。
ほとんど中国は上海で撮影していたみたいだけど、昭和20年代の東京の臭いがプンプンするの。
屋内ならセットが作れるからいいのだけど、ロケがすごいよ。
未舗装の道路とか、町並み、家並み、実際には知らないけど、懐かしい昭和の東京って、絶対こんなんだったよ、って思えるようなロケだったんだよ。
これには参った。
視覚的に訴えられる刺激は、十分合格。
ストーリー構成が、過去に戻ったり、先に進んだり、少々分かりづらかったからね。
しかも事件の成り行きも、ちょっと分かりづらかった。
登場人物の関係もややこしいし。
脚本が稚拙というか、すっきりしない分、そのもやもやを、素晴しいロケで補っている感じ。
後半、美馬坂研究所の内部に舞台が移り、建物自体はまだ良かったのだけど、医療機器、たまはそれに順ずる機械、加菜子や久保の描写は、急にSFちっくになっちゃって、興ざめした部分はあったのだけどね。
特に久保はねぇ。
思わずジェシカ・アルバ主演のドラマ「ダーク・エンジェル」を思い出したくらいだよ。
でも、風景、ロケは、良かった。

原作がそうだから、あまり大きな声では言えないのだけど、
主役の中禅寺が出張ってくるまで、時間がかかったねぇ。
榎木津や関口が、それぞれ事件に関わり、にっちもさっちもいかなくなると、みな中禅寺の元に集まってくるのは、いつものパターン。
それは分かっているのだけど、映画だからさ、もう少し早く、中禅寺が活躍しても良かったかな。
登場人物が多いのは、大変だね。活躍させるのが。

この作品で、一番核だと私が思うのは、美馬坂が、免疫や人工で作る身体のパーツを研究していたところ。
今でも、まだ完全には、身体のパーツは人工で作れないからね。
実験段階では、なんだかあるようだけど。
あの研究所自体が、加菜子や、後の久保の、身体の一部だったんだ。
機械は彼らの内臓のどれかの役割を果たし、心臓の代わりになり、血管の代わりになる。
今なら、人工心臓や、生体間移植なんかは常識だけど、当時、終戦直後の話だと思うと、なんでか鳥肌が立つ。
本来、あるべきものがない。
それでも生きていられるって状況が、鳥肌の原因かも。
今の医療なら、納得なのに。ね。
美馬坂があのまま、常識内で研究を続けていたら・・・
それがこの原作を読んだ後の感想であり、余韻で、
映画を見て、果たしてその余韻が感じれただろうか。
おふざけのタイミングを間違うと、ただのエンターテイメントで終わっちゃうからね。
もう少し、かな。惜しい。

思っていた以上に、グロい描写があったけど、別に年齢制限はないんだ。
ふーん。
匣にみっしり詰める為に、邪魔な手足を切断する、って考え方が、すでにグロいよな。
あの頼子は、年齢制限なくていいのか?
江戸川乱歩の「芋虫」も、「シン・シティ」のケヴィンも、そう言えば“同じ”。

ラストのクライマックスは、美馬坂と顔見知りだった中禅寺の対決となる訳だけど、
正直、もう少し緊張感のある会話合戦が見たかったな。
どうも、建物の崩壊の方が気になって、二人のやり取りに集中できなかった。
中禅寺の最大の武器である、“憑き物落とし”も、言葉が必要不可欠だしね。
一瞬で周りを自分の射程距離に取り込んで、気がつくとペースに引き込まれていて、相手を落とす中禅寺はカッコイイのだけど、それが御筥様の教祖の前では上手くいったのに、
美馬坂との対決では、ピタッとハマる瞬間がなかった気がするな。
ストーリー構成に不満があった割りに、映像的に良く、面白いと思いながら見ていたから、クライマックスが建物の崩壊じゃ、もったいなさすぎ。
美馬坂と中禅寺の対決が、クライマックスにならなきゃ。
期待は大きく持ちましょうよ。
期待がなければ、まず見ない邦画なんだしさ。

もし、もう1作作られるとしたら、是非「陰摩羅鬼の瑕 」をやって欲しい。
この作品のラスト、オチの部分は、驚愕だよ。
ま、相変わらず長いから、映画化は難しいだろうけどね。
この映画、薦めるべきか、そうでないか、判断が難しいなぁ。
これから見る人は、是非、予習でストーリーは追っておいた方がいいかも。
人物関係もね。
それでも見たい方は、是非。


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コメント 5

LICCAさんもけっこう読んでるんですねぇ~
京極堂シリーズは全部読んでるんだけど、イメージが
すでに出来上がってしまってるのでww映画は観れない
んですよ。
私のイメージだとエノさんも京極堂も、木場修もそれぞれの
役者さんとはちがうイメージなので・・・(^^;
それにしてもLICCAさんはいろんなところよく観てますよね。
スルドイよね。
by (2008-01-20 09:28) 

Catcat44

little_snowさん、こんにちわ!
京極堂シリーズは、学生の時に本好きな友人(本屋に勤めてます/笑)に薦められて読みました。すでに3弾くらいまで発売されていたので、せっせと読みました(笑)
確かにイメージ違います。関口、榎木津、木場修、敦子は、違いますね。それを踏まえて映画を見ているので、ある意味納得もしているんですけど。原作通りとはいかないものです。
思い入れがある作品の方が、いろいろ言いたくなっちゃいます(苦笑)
製作陣には、いつも申し訳ないなぁと思いつつ、好きな事書き逃げしてるんですけどね~。
by Catcat44 (2008-01-20 15:36) 

うつぼ

こんばんは♪
京極作品、一度も読んだことなく、、、この手の映画も???と思っていたのですが、LICCAさんの記事を読むと面白そうですね。
(京極夏彦自身は存じております、念の為)
確かに原作を読むと映画化されたときに必ずアレアレ?ってことありますよね。実写にすると仕方ないことなんですが。。
by うつぼ (2008-01-20 20:08) 

Catcat44

うつぼさん、こんばんわ!
京極さんの作品は、どれもマニアックですから、敷居が高いといえば高いかも、ですね。
原作と映画化の関係は、永遠のテーマな気がします。
「ロード・オブ・ザ・リング」も最初はいろいろあったようですし。
最近だと、「ドラゴン・ボール」とか、どうなんでしょうか・・・
by Catcat44 (2008-01-21 22:26) 

Catcat44

SRさん、nice!ありがとうございます。
by Catcat44 (2008-01-21 22:28) 

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