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“キトゥン”に激LOVE 【プルートで朝食を】 [映画日記<2006年>]

「プルートで朝食を」を見たよ!

ずばり、銀座シネスイッチという映画館のみでの上映。
こういう、本当に単館の作品って、独特なものが多いと思うな。
これもそういう作品。

監督のニール・ジョーダンは、自身もアイルランド出身で、アイルランドの歴史や文化、そこに暮らす人々に関する映画を、撮り続けている。
アイルランドには熱~い熱~い方。
これは、60~70年代のIRAのテロ活動も激しいアイルランドとロンドンが舞台。

アイルランドのとある町に暮らす少年パトリック(キリアン・マーフィ)は養子だ。
小さい頃から女性ものの服を着たり、口紅をつけたりするのが好きな男の子だった。
高校生の頃、女装を咎める義母と義姉に反抗し、ウチを飛び出す。
一路、本当の母親に会いに、ロンドンを目指して。
そこから、パトリックの数奇な半生が、当時のポップミュージックにのせて、あくまでも明るく前向きに描かれている。

パトリックは、とにかく極上にポジティブ思考の女装嗜好者だ。
自らを、パトリック・“キトゥン”・ブレイデンと名乗り、出会う男、女、いい人、悪い人、とにかく彼の(彼女の)ペースで時間は流れ、どんなに裏切られても、落ちるところまで落ちても、持ち前のポジティブさだけは失わないで、パトリックは生きていくんだよね。
キトゥンだよ!子猫ちゃん(笑)
それで、周りのパトリックに関わった人達も、なんとなくパトリックのペースに巻き込まれているんだな。
落ちても落ちても、決してめげずに生きるパトリックは、たくましくて、愛おしいよ。
男に捨てられ、時に愛され、風俗まがいの仕事もし、テロにも巻き込まれ、誤認逮捕されても警官もすっかりパトリックのペースだ。
結局、見かねた警官の紹介で、合法的な覗き部屋で働き出すと、そこへある人物がやってくる。
それは、パトリックの本当の父親。
町の神父(リーアム・ニーソン)と、家政婦の間に生まれたパトリックは、生まれてすぐ、母に教会の前に置き去りにされ、困り果てた神父は、知り合いの家に養子に出した。
それをパトリックに告白するリーアム神父。
晴れて父親の元に、故郷のアイルランドにパトリックは帰る。
そしてその父から、母の住まいを教えてもらい、ついに母に会いに行くのだった。

まず、パトリックを演じた、キリアン・マーフィが、たまりませんよ。
一世一代の快演と評価されていたけど、正にその通り。
少年~青年にかれてのパトリックは、しゃべり方は女性そのものだけど、容姿は、まだ中途半端な感じがある。
でも、色気みたいのが、あるよな。
ロンドンの覗き部屋で働き始めた頃から、すっかりキレイになっちゃうんだ。
髪も生来のブラウンから、ブロンドに染め、ヒラヒラしたカワイイ衣装に包まれていると、実は男性が演じているのを忘れてしまいそうよ。
それくらい、美しいから。
立ち居振る舞いから、しゃべり方、歩き方、全てが女性より女性らしい。
さらに、パトリックの性格が、またかなり個性的で良いよ。
なんというか、めげないし、言い訳とかじゃないんだけど、ちょっと言葉で人を煙に巻くみたいなところがあって、女装もそうだけど、常に自分を見失わないたくましいパトリックの性格付けが、素晴らしかったと思う。
批評家は、よく「嫌われ松子の一生」を引き合いに出すけど、こちらの方が、真面目な気がする。
一応、コメディとなっているみたいだけど、私はちょっと違うんじゃないかと思うな。
伝記っぽいよ。

その他の出演者は、いわゆる、ニール・ジョーダン組ってやつね。
リーアム・ニーソンも、スティーブン・レイも、ブレンダン・グリーソンも、みんなアイルランド近辺出身の方々。
この頃のアイルランドは、テロが激しい。
独立運動の映画は、多分たくさんあると思う。
ちなみにニール・ジョーダン監督も、「マイケル・コリンズ」って映画撮ってるし。
でもこの作品の中のテロは、あくまでも生活の一部として。
パトリックも、幼馴染を亡くしたり、自身も巻き込まれたりしてる。
町の様子とか、風俗とか、いちいち生々しくて、監督がアイルランドをすごく愛しているんだなぁと、あらためて感じるよ。

パトリックが、友人チャーリーとその子供と、落ち着いた生活ができるようになるまで、それこそ色々楽しい事も悲惨な事も、たくさん起こるけど、ラスト、父親と一時別れて、チャーリーと暮らすパトリックは幸福そうだよ。
キレイで、生き生きしてて、思わず涙腺が緩みそうだったからね。
うん。やっぱりこれはコメディじゃないよ。
立派なヒューマンドラマだと思う。
ただ、主人公のパトリックが女装しているだけ。
時代と周りの反応に翻弄されながらも、たくましく生きるパトリックの物語だよ。
なんで、単館なんだろうね。
見終わって、なんだかパトリックに癒されていたからさ、もっとたくさんの人に見て欲しいと思う訳さぁ。
残念だよっ。

ちなみに、ニール・ジョーダン監督って、トム・クルーズとプラッド・ピット出演の、「インタヴュー・ウィズ・バンパイア」も撮ってるんだよね。
作風とか違って見えるから、ちょっと驚きだけどね。


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