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オヤジの再生物語 【16 BLOCK】 [映画日記<2006年>]

「16 BLOCK」を見たよ!

冒頭から余談だけど、原題は「16 BLOCKS」
今どき小学生でも、英語は複数形の“S”がつくって知っているだろうに、
邦題はどうして“S”を抜いたのだろうね。

16ブロック=16区画。
碁盤の目に街が整備されているニューヨーク、じゃなくても、外国ではよくこう呼ぶよね。
道から道までが1区画って事だよね。
それが16個分。
約1.5kmちょい。ほぼ山手線2駅分。
たったこれだけの距離で起こった、約2時間の、アクションありの人間ドラマだよ。

ニューヨーク市警、ジャック・モーズリー刑事(ブルース・ウィリス)。
悪い右足を引きずり、中年太りのお腹がベルトにのっかり、スコッチ漬けのアル中。
ヤル気より酒。
敏腕刑事だったのは、昔の話。
夜勤明けのジャックは、上司より、証人になる囚人エディ(モス・デフ)を、16ブロック離れた裁判所まで連れて行く残業を押し付けられる。
15分で終わるからと、言いくるめられて。
署を出てすぐ、しゃべりまくるエディを車において、ジャックは馴染みの店で、スコッチを仕入れる。
店から出ると、車の中のエディに、銃を向ける男が一人。
次の瞬間、ジャックはその男を撃っていた。
銃弾にさらされるエディ。
彼を車から引っ張り出すと、ジッャクは常連の飲み屋へ逃げ込む。
そこで署へ連絡を入れると、かつての相棒、フランク・ニュージェント(デヴィット・モース)がやってきた。
そこでジャックは、フランクの口から、やっかいな事を聞かさせる。
エディは、悪徳警官の所業を目撃しており、それを証言されると、芋づる式にたくさんの刑事が、検挙されるであろう事。
その為に、エディはここで、始末しなければならない事。
ジャックは、いつものように、口をつぐんで知らないフリをして、素直に自宅に帰れば、翌日からまた普通の日々が送れるはずだった。
ところが、ジャックの中で、何かが起きた。
同僚の刑事を撃ち、ジャックはエディをつれて逃げる事を選んだのだ。
裁判で証言するタイムリミットは、約2時間後。
同僚の全ての刑事が敵に回る中、ジャックは無事エディを連れて、裁判所までたどり着く事ができるのか・・・

中年の疲れたアル中刑事のジッャク・・・ブルース・ウィリスが、とてもハマりすぎ。
ワイシャツからでも分かる下っ腹は、見事。
引きずる右足には、土踏まずに小石なんかを入れて、自然に見せたらしい。
走ればすぐに汗をかき、息はきれ、涙目で、赤ら顔、白髪交じりのハゲ上がった髪。
熟柿の匂いがしてきそうな、素晴らしくカッコ悪い役作りが、サイコーにハマってるよ。
カッコ悪いからこそ、ジャックの人間臭さと、その後のエディとの掛け合いのドラマに、味が出たのだと思うよ。

エディを演じたモス・デフは、ラッパーなのだってね。
でも、このエディ役の成功が、この作品がさらに面白くなった理由だと思う。
小悪党なのだけど、とにかくよくしゃべる。
さらに緊張をしゃべって紛らわそうと、まだしゃべる。
時に、子供に優しさを見せたり、何でも吉兆だと言ったり、ケーキ屋に憧れたり、ね。
舌足らずなんだか分かんないけど、発音のはっきりしない、独特のしゃべり方をする人だよ。

ジャックとエディの、対比が面白いね。
ジャックは、何もかも手に入れたのに、明日に絶望する男。
エディは、何も持っていないのに、明日の希望に生きる男。
その二人が、とんでもない事件に巻き込まれながら、人は変われるというテーマを体現していく様は、アクションそっちのけで、感動してしまったよ。
小悪党のエディに、ジャックは、人は簡単に変われるものじゃない、と言い聞かせるのだよね。
だからエディが、どんなに更生を誓っても、ケーキ屋の夢を語っても、またすぐに小悪党に戻ってしまうだろうと、ジャックは言うのだよ。
でも、自分の命を懸けてまで、エディを救おうとしたジャックに、エディは犯罪者から更生した有名人の名前をあげて、自分達も変われるのだという事を、ジャックに信じさせようとするんだよね。
ともすると、死に場所を求めてるようなジャックに、エディは人は変われるという事を信じさせて、ジャックに希望を与えようとするのだよ。
成り行き上、バスを乗っ取ってしまって、SWATの突入直前、乗客が持っていたテープに、遺言を吹き込むジャックと、
せっかく逃がしてもらったのに、更生した犯罪者の名前を叫びながら、バスに戻ってくるエディと、
生きる力の両極にいる二人のシーンに、思わず涙が滲んじゃった。

撃ち合いやら、バスの暴走シーンなど、ニューヨークの街を使ったアクションもすごいのだけど、
それより、ジャックとエディの人間模様というか、二人の移り行く心理描写の方が、ぐぐっときたね。
結局、一番最初に、何がジャックを目覚めさせたのは、よくは分からないけど、
「何か良い事がしたかった」っていうジャックのセリフもあるのだけど、
死ぬ前に、もう一度、正義感に燃えていた頃の自分を、一瞬でもいいから、取り戻したかったのかな。
それと、悪徳警官の芋づるの先には、ちゃんとジャック自身もいて、
もちろん、昔の敏腕だった頃のジャックだけど、
エディを助ける事が、ジャックにとっては、贖罪なのだろうね。
過去を償って、もう一度未来へ。
本当に正しい事とは何ぞや。
それが、テーマか。
中年男性の、再生物語でもあるね。
あぁ、おじさんもう一度ガンバレ、って事か。

エディが、出会う人みんなに問う、なぞなぞのような心理テストのような話が、ちょっとした禅問答みたいになっているのね。
嵐の日、バスを運転するアナタは、3人の人に出会う。
一人は、具合の悪いおばあさん。
一人は、アナタの命の恩人の友人。
一人は、ものすごいタイプの美女。
しかし、もうバスには、一人しか乗せる事ができない。
さあ、アナタは、誰を乗せますか?
ラストでジャックは、エディにこう答える。
自分はバスから降り、友人に運転させて、おばあさんを病院へ送る。
そして自分は、ものすごいタイプの美女と、二人っきりになる。
その答えを聞いて、ジャックは根っからの悪でもなく、ましてや、人生捨てるような人物でもなく、
本当はナイスガイなのではないかって、思わせるよね。
シャレの効いた、カッコイイ男なんじゃないかってね。
してやったり。まんまとやられたわ。

ジャックの妹が救急隊員で、撃たれたエディを助けたり、エディが後に、ちゃんとケーキ屋になれたりとか、いかにもハリウッドのハッピーエンドで、ツッコミどころだけど、それはご愛嬌でしょう。
あえてツッコミ入れなくても、充分面白かったしね。

タイムリミットが用意されてて、それまでに本当に裁判所へたどり着けるのか、ドキドキ感がイイ。
しかも、物語中の時間の流れと、本当の時間が、ほぼシンクロしてて、ドキュメンタリーちっくに作ってあるのだよね。
余計、ドキドキできるよ。
なかなか面白くて、楽しめる作品だったわ。
監督がリチャード・ドナー。
聞いたことある名前のはず。
「リーサル・ウェポン」シリーズというよりは、私の中では、あのブライアン・シンガー監督が、ものすごいリスペクトした、「スーパーマン」を撮った監督さんだね。
さすが、と言うべきかな。

これは完全な余談だけど、
エディが大切にしていたケーキのレシピが書いてあるノートが、「バタフライ・エフェクト」で主人公が日記を書いていたノートと同じだった。
白黒の模様のやつね。
ものすごい定番のノートなのかしらね。きっと。

アクション映画のはずが、味のある人間ドラマが楽しめて、一度で二度オイシイ、みたいな作品だったと思うわ。
やっぱり、ブルース・ウィリスには、刑事役が良く似合う。
「ダイ・ハード」のマクレーン刑事にしても、今回のジャック・モーズリー刑事にしても、どの道、運の悪い刑事なのだね。
笑えるくらい、巻き込まれ型の典型だね。
今回の作品は、さすがにシリーズ化できるような内容ではないけど、かなり満足できて、ご満悦だわ。


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non_0101

こんばんは。
私も観てきました。結構、面白くて良かったです!
>このエディ役の成功が、この作品がさらに面白くなった理由だと思う。
そう、この人の延々と口から出てくるおしゃべりがすごいなあと思いました。
私の後ろで観ていたおばあさんが途中で「よくしゃべれるね~」と言っていて
思わず噴出してしまいました(笑)
by non_0101 (2006-10-21 00:20) 

Catcat44

>nonさん、nice&コメントありがとうございます。
この作品、なかなか面白かったですよね~。
モス・デフの、変な(失礼!)しゃべり方が、いつまでも耳に残ってましたよ(笑)
あと、一緒に見ていた観客の、平均年齢の高さに、ちょっと驚いたり・・・しました。
by Catcat44 (2006-10-22 00:42) 

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