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定番も良しとするか 【リベリオン ~反逆者~】 [映画日記<2006年>]

「リベリオン」をレンタル&視聴。

この手の近未来アクションは、大概展開が予測できちゃうのだけど。
その想定内で、いかに心に残るものを作るか、それかな。
そういう意味では、決して予想より出るものはないけど、でも見た後の収まりの良さがいい作品なのだと思うよ。

第三次世界大戦後の人類。
この次、また戦争が起これば、人類の滅亡は避けられない、と判断した生き残った人たちは、徹底的に感情を制御した世界を作り出した。
感情を揺さぶる可能性のあるもの、主に芸術に関わるものは、一切禁止。
本、音楽、絵画、動物達・・・
負の感情、怒りや憎しみを制御する弊害として、愛情や喜びといった感情を犠牲にしていた。
さらに、感情を制御する薬の投与を義務付け、違反者を取り締まる“クラリック”と呼ばれるエリート取締官が、厳しい警戒をしていた。
そんな“クラリック”のプレストン(クリスチャン・ベール)は、直感的に、人の感情の高ぶりを察知できる凄腕の取締官。
彼は、ある日、朝の投与分の薬を、落として使えなくしてしまう。
薬なしで取り締まりに出かけたプレレストンは、自分の感情の変化に気付き、戸惑う。
やがて違反者達の残した芸術品の興味から、逃れられなくなっていくプレストン。
半信半疑のまま、自分の感情に逆らえなくなっていくプレストンが、最後に選んだ結末は・・・

故意的に感情を抑えている人々が、怖い。
無表情というのではなくて、どこか押さえ込んでいる感じかな。
役者を無表情のゾンビにしなかった監督は、エライ。
プレストンを演じるクリスチャン・ベールが、薬をやめてから、湧き出る感情に惑わされ、動揺しながらも、次第にそれを認めていく様子を、丁寧に演じていて、良い感じ。
彼の無表情のドアップは、なかなか怖いけど、ちろっとずつ、表情がゆるんでいくのは、ある意味微笑ましかったよ。

こういう感情や芸術を禁止した未来設定というのは、決して目新しくないけど、
昔、日本のドラマでも見た事あるしね。
違反者達が、アジトに隠し持っている音楽や絵画や本が、
現在普通に流通している、というか、有名なクラシックだったり、モナ・リザだったり、一般家庭に置いてあってもおかしくない調度品だったり、考えると恐ろしいよね。
今、私の周りにある、ほとんどのものが禁止されちゃうなんてさ。
生活=感情だよね。
それを、改めて実感しちゃったかな。

“クラリック”が使う武術、“ガン=カタ”
中国武術の形に、銃を撃つ動作を上手く混合させて作った形らしいのだけど、これが、なかなかカッコ良く見せているよ。
銃弾を避けてみせるなんてシーンが、時たまあるけど、それはムリだろうと思うと、急にウソ臭くなるものだけど、この“ガン=カタ”は、相手の動作の先を読んで、ようは引き金を引く前に、それを予測して、銃を避けるから、決して弾が当たらなくても、ウソ臭くならないのだよ。
全体として、アクションや、衣装とかは、見てすぐ分かるのだけど、「マトリックス」に大いに影響されている模様。
プレストンも、見た目、ネオっぽいし。
それでも、“ガン=カタ”を使った銃撃戦や、日本刀を使った剣術アクションは、なかなか楽しめたよ。

プレストンが薬をやめた結果、彼は、違反者達と接触し、感情ある、いわゆる普通の暮らしの事を知り、政府組織の壊滅に、手を貸す事になる。
その為に、表向きは“クラリック”のまま、裏で動く事になるのだけど、
同僚の“クラリック”に疑われて、逆に違反者として逮捕されたり、前途多難。
しかも、薬をやめたせいで、いちいち自分の感情に左右されて、動揺しまくり。
違反者として処刑された元相棒(ショーン・ビーン)の恋人に、懸想までしたりね。
彼女の香水が香る、赤いリボンを隠し持っていたり、
殺される子犬を見かねて、なんだかんだ理由を付けて助けたり、その為に警官を皆殺しにしたり、
プレストンの不器用さが、感情を初めて知って、受け入れていく段階としては、いい効果だったかもね。
子犬に顔を舐められて、どうしたらいいか分からない表情のプレストンは、笑えるよ。
ま、子犬のアップは、卑怯かな。可愛すぎてね。
一応、伏線になっているのだけど、プレストンの妻が、4年前に感情違反者で、処刑されているのだよね。
息子と娘がいるのだけど、この息子が、実はかなりの曲者。
一番おどろいた登場人物だったのだけど、
小学生くらいで、無表情で政府の宣伝放送を見たりしている姿は、かなり不気味。
なのだけどね。
プレストンが、感情違反の容疑で、家宅捜査を受ける時、慌てて未使用の隠してある薬を取りに、隠し場所の洗面台の鏡のをはずすのだよね。
でも、そこには、隠してあった薬は、なくなっていた。
実は、その息子が、処分していたんだよ。
息子がプレストンに、「もっと上手くやらなきゃ」って言って笑うの。
この息子、サイコーだよ。
実は、息子は、母親が捕まった4年前から、薬は未使用。妹も同様。
4年間、“クラリック”の父親に、薬の未使用を隠していた訳だ。
多分、母親の影響なのだろうけど、知らぬは父親ばかりなり、だよ。
妻が逮捕された時、彼女はプレストンにキスして、「Don't Forget me.」って言ったのかな。
その時の、戸惑う表情のプレストンが、印象的。
彼は、もっと早く、何が大事なのか、気付くチャンスがあったのだよね。
妻に、間違いなく愛されていた訳だからさ。
ラスト、もちろん、プレストンは勝ち、やがて市民蜂起が起こって、多分この世界は、一旦壊れるのだろうね。
まぁ、ありきたりすぎて、ちょっと恥ずかしいけど、やっぱり大事なのは、人の心って事だ。
負の感情もあれば、善の心もある。
それが、人というもの。
これって、仏教的な考え方なのだね。
プラスマイナス、両方の感情があるから、できるだけマイナスの方を、自制心で制御しようとする。
煩悩を捨てるって事だ。
性善説や性悪説とは、違うって事なのだろうね。

私は、楽しんで見たけど、その手のB級映画は、見る人それぞれ、良しとするか悪しとするか、分かれるところだとも思う。
“ガン=カタ”にしても、カッコイイとするか、アホらしいとするかで、大きく違う。
設定だって、あまりに定番で、それを受け入れて見れるか、否か、全く感想は違ってくるだろうからね。
「リベリオン」は、非常に分かりやすい作りで、小難しい解釈はいらない作品だと思う。
見たまま、感じたままが、ほぼ作り手の言いたい事で、間違いないはず。
裏を読むとか、行間を読むとか、そういう楽しみ方も、もちろん素晴らしいと思うけど、こういうストレートすぎる作品も、これはこれで楽しいよ。
これを言ったらお終いな気がするけど、A級だろうがB級だろうが、ようは見た本人が楽しめたかどうか、だよね。

制作が、「スピード」のヤン・デ・ボンで、ちょっと納得。
クリスチャン・ベールは、「バットマン・ビギンズ」しか見た事なかったけど、硬派な役が似合うね。
詰襟が似合う(笑)
「イーオン・フラックス」とかもそうだけど、世界共通認識として、近未来は、抑制された世界と設定するのが、人気だよね。
ストーリー展開しやすいのだろうし、ヒーローも生まれやすいから、当たり前といえば当たり前か。
でも、そうはなりたくないっていう気持ちがあるから、きっとこういう近未来設定のお話が、なくなる事がないのだろうと、思うな。
そうはなりたくないって世界は、フィクションの中だけで、充分。
そういう事だよ。

リベリオン -反逆者-

リベリオン -反逆者-

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 発売日: 2003/10/24
  • メディア: DVD


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コメント 4

堀越ヨッシー

LICCAさん、こんにちは。
「リベリオン」キターーーーーー!!!!!(笑)
大好きなんですよ、この映画。クリスチャン・ベールはかっこいいし、描かれてる世界観も好き。もちろん、“ガン・カタ”も好きッス(苦笑)。おまけにショーン・ビーンも好き..(オレはオマケ扱いか!?...byしょーん)
この映画の世界では、人々の感情がコントロールされてますよね。それってすごく不快な事だけど、一方でそうしないと人類は一つ上のステップに上がれないんじゃないか...そんな気もするんです。怒りとか憎しみなんて感情があるから、いつまでたっても人々は争い続ける...平和な世界を構築しようと思ったら、そういう負の感情は必要ないんじゃないのか?..そんな事を思ってみたり。
でもその一方で、負の感情も人間を形成する上では重要な役割を持っているのではないか?..とも思います。負の感情を排除して育った人間が、果たして“人間”らしいのか..?甚だ疑問です。
この映画を見ながら、平和のために人格をコントロールするのか?、それとも人間らしく生きるかわりに争いの耐えない世界に生きるのか?...そんな事をしみじみ感じたオイラでした。
でも最終的には、「クリスチャンのガン・カタ、かっちょいい〜!!』と、中学生並の感動が全てを覆ってしまったんですけれども...(苦笑)。
by 堀越ヨッシー (2006-10-23 07:05) 

Catcat44

>ヨッシーさん、テンション高いっすよ~(笑)
niceありがとうございます!
私も、クリスチャン・ベールが普通にカッコエエと思った一人です。
一人で大勢を倒すのよりも、ラスボス(笑)とのサシの勝負で、銃を避けあっていたのが、カッコ良かったですね。
そんで、ラストの笑顔は、やられますって。
私は、人は怒りや悲しみの心があるから、優しくもなれるのだろうと、考えます。
悲しみを知っているから、喜びが心地よいのだし、憎しみを知っているから、優しさに感謝できるのですよ。
どちらか片方では、足りないのですよね。
でもやっぱり、戦争はなくならないんだろうなぁとも思いますけどね。
一人でなくなった時点から、ズレは生じるものなのですよ。
業とか性とかなんでしょうかね。
あぁ、こういう事考えていると、しみじみしちゃいます。私も年取った証拠かしら・・・
by Catcat44 (2006-10-23 21:42) 

SoundsofLiberty

こんにちは。リベリオンで検索しておじゃましました。
私は単純に、アクションに魅かれてこの映画が好きです。
ツッコミ所満載なのですが、それを気にさせないガンカタ。
これぞB級映画の傑作、と思っています。。。
by SoundsofLiberty (2007-01-18 22:32) 

Catcat44

箱屋さん、nice!&コメ、ありがとうございます!
ガン=カタって、妙に理にかなっていて、楽しかったです。
アクションと近未来って、ものすごい定番ですけど、私もなかなか面白くみれた作品ですよ!
by Catcat44 (2007-01-18 23:12) 

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