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容認したくなる復讐だな 【ザ・シューター 極大射程】 [映画日記<2007年>]

「ザ・シューター 極大射程」を見たよ!

アフリカ、エストリア。
海兵隊、狙撃に関しては抜群の腕を持つ狙撃兵ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォールバーグ)は、相棒のドニーと共に、偵察&狙撃任務で、配置に着いていた。
しかし、思わぬ敵の襲撃に、ドニーは射殺され、敵陣深く潜んでいたボブも、また味方に置き去りにされ、命からがら帰還する。
それから3年。
退役したボブは、世間から逃れるように、ひっそりワイオミングの山奥で、愛犬サムと、狩猟生活を送っていた。
そこを見つけ出し、やってきたのは、退役軍人ジョンソン大佐(ダニー・グローバー)と、その部下。
大佐の話によれば、近く、大統領を狙った暗殺が計画されているらしい。
しかも、シークレットサービスの警備網の外、約1600m先からの狙撃。
ボブは、その腕を見込まれ、暗殺者が潜みそうな場所を探し出して欲しいと、依頼される。
最初こそ、けんもほろろに断ったボブだったが、愛国心を巧妙に刺激され、結局は仕事を引き受ける。
下見の後、大統領の演説当日。
大佐たちと仮設基地で警戒にあたるボブは、狙撃のタイミング、場所、つつがなくチームに報告するが、
ボブが警告を発した瞬間、2発の銃声が聞こえる。
一つは、大統領の隣にいた、エチオピアの大司教の頭部へ。
一つは、ボブ自身の右肩へ。
ボブは、ほとんど本能にまかせた危機回避能力を屈指し、その場から逃げ出した。
すると何故か、大統領の暗殺が、ボブの犯行によるものだという報道が、すでにTVでされていた。
ハメられた事を悟るボブ。
行く道、警戒に当たっていたFBI捜査官ニック・メンフィス(マイケル・ペーニャ)を押し倒し、拳銃を奪いながら、大統領の暗殺が自分の犯行ではない事、ハメられた事を、咄嗟に伝える。
2発の銃弾を受けながらも、ボブは捜査網を潜り抜け、かつての相棒、死んだドニーの未亡人サラ(ケイト・マーラ)の家に転がり込む。
傷が癒えたら、自分をハメた連中に復讐し、汚名を晴らす事を誓って。
ボブの命を懸けた復讐が、今始まる・・・

主人公がハメられ、汚名を着せられ、おまけにケガまで負わされ、
そこからの復讐劇というのは、決して目新しくもないけど、やはり見せるだけの力がある魅力的な設定だと思った。

まず、ボブ・リー・スワガーの狙撃の腕というのが、あまりに素晴らしく、それだけで文句なくカッコイイ。
軍では、もちろん人を殺す為の技術なのだけど、2km近く離れた標的を、1ミリと違わず撃ち抜く様子は、堪らないなぁ。
何も起こらないように見えて、しかし飛んでいった弾が、静かに標的の頭部を確実に弾けさせる。
銃は殺す感覚が残らないからいい、なんて、読んでいるマンガにセリフがあったけど、正にそんな感じで、殺している感覚が少なく、しかも命中したという快感がある。
長距離の狙撃って、なんとも不思議な感じがしたわ。

それと、とっくに死んでるでしょう、と思われるほどの失血をして、それでも軍から仕込まれたサバイバル能力で、回復してしまうボブは、なんかスゴイ。
日常品を利用した即席点滴は、驚いたわ。
ミネラルウォーターに食塩を入れて点滴。
止血は砂糖。
ムダな知識だけど、ほほぅと感心するよね。
それと、ナースだと思っていたけど、実は血が苦手な普通の女性だった、ドニーの未亡人サラに、ムリヤリ簡易手術、銃創の縫合をさせてしまうあたりも、ツッコみたいけど、勢いで押し切られちゃった感じ。
捜査にあたっているFBIや、ボブをハメたジョンソン大佐率いるチームの、さらに上をいくボブが、逞しいよ。

回復してからのボブは、汚名を晴らす、ハメた奴らに復讐する、その勢いは神がかり的。
元々、ボブから直接無実だという言葉を聞かされていたニック・メンフィス捜査官が、ボブ犯行説に疑問を抱き始めた時から、あぁ、彼は、ボブの味方になるなぁ、ってのが、薄々気付いちゃったけど、それでも彼なくしては、ボブの計画は成功しなかっただろうから、いいキャラだったって事だね。
黒幕だと思われた人物から、さらにその先の人物へ、さらにその先の人物へと、矛先が段々と政治の世界のエラい人物に変わっていくあたりも、いかにもアメリカっぽいと思ったわ。
しかも、大統領暗殺に見せかけた、エチオピア大司教暗殺の動機が、アフリカのパイプラインにまつわる金儲けと、住民を大量虐殺した事実を隠蔽しようとした結果だなんて、やっぱりアメリカだなぁ。
金の為なら、人の命は塵以下・・・?
なんてテーマがあって、ボブの復讐に託けた、利益主義に対するアンチテーゼが、隠すでもなくあるのは、まぁそこまで露骨じゃない方が良かったけど、それもいかにもっぽいかなぁ。

ただ、そういう人道的なテーマにのって、ボブの復讐劇は、汚名を晴らす為というだけじゃ、正当化できないほど、人の命を奪っている事を、どうしてもムシできなかったな。
美しい復讐劇なんてものがあるはどうかは分からないけど、ボブの復讐は、美しいものでは決してないと思う。
もちろん、ボブが、ボブ自身の汚名を晴らすのは、それは仕方のない事でしょう。
じゃないと、一生暗殺者としてFBIや警察に追われるだろうし、愛国心を利用され、ハメられた自分自身にも決着がつかないだろうしね。
それを、物的証拠や、証言から晴らすのではなく、容赦なく人を撃ちながら進むのも、これもまた、いかにも、だよね。
確かに、このボブの敵は、殺されても仕方のないほど非道な事をしてるんだけどね。

こんな風に思いながらも、それでもバンバン人を撃って、前に進んで、敵を追いつめていくボブは、カッコイイんだなぁ。
雪山で、相当な距離を、正確に撃ち抜くボブは、惚れそうだよ。

ラスト、FBIによって収監されたボブが、エラい人達全員集合させ、ジョンソン大佐、大佐の黒幕である上院議員を糾弾しようとして、結局は、自らの自由を得られたが、それだけしかできなかったシーンを見て、どうやってあの憎きジョンソン大佐&上院議員をやっつけるのかと、首を捻って見てたけど、やっぱりそうかな展開で。
それじゃ、犯罪者と変わらないよ、と思いながらも、一人一人、銃弾に捕らえ、射殺していくボブを、正当化しそうになる。
まるで、8時45分から、正体を明かして切って切って切りまくる、時代劇の主人公みたいだ。
火薬多めで、ロッジごと全員、死体まで葬ったボブは、やっと溜飲が降りたんだろうかね。
それで当たり前な気もするし、そこまでしないと気がすまないか、とも思う。
復讐は虚しいなぁ、と、これまた当たり前の感想が、でてきたけどね。

ボブ・リー・スワガーを演じたマーク・ウォールバーグは、ちょっとマット・デイモン似の、マッチョまでいかないけど、いい感じに引き締まった身体が、ボブにリアリティがでて、ちょうど良い感じだったわ。
ものすごい2枚目でもないし、ちょっと印象の薄めの顔立ちだけど、主人公を演じて、見劣りしないよ。
いままでは、あまり気に止める俳優さんじゃなかったけど、これを機会に、覚えておこうと思う。

ボブとニックのコンビも、何故かちょっと可笑しさもあって、いい味だしてたし、
主人公とヒロインが、結ばれない、ヤラない、硬派な作品としても、いい感じだよ。
ちなみに、途中で登場する、銃に関するめちゃめちゃすごい知識を持った、偏屈な老人がいるんだけど、この老夫婦はツボ。ナイスなキャラだよ。
スッキリしそうで、実は考えされられちゃうってのも、ちょっとした裏切りでいいんじゃないかな。
出演者は地味だけど、面白かったよ。
余計なツッコミなしで、楽しんでみてはいかがでしょうかね。
軽~く、お薦め。


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YaCoHa

こんにちは。「ザ・シューター極大射程」で検索しておじゃましました。
スゴイレビュー、面白く拝見しました。(他の映画の記事も拝見しましたが、あっ!ねたばれあり?読んじゃった!)
私もこの映画、面白かったです。「この先も射撃マニアのままで生きて行きたい」といった台詞にウケました。あの「銃器の神様」みたいな老人よりも、せっせと身の回りの世話をする奥さん?に、なぜか心打たれました(笑;)。
by YaCoHa (2007-07-04 01:27) 

Catcat44

Yakohaさん、こんばんわ!
えっと、全てネタバレしてます。大丈夫だったでしょうか?
マーク・ウォールバーグって、カッコいいんだ!って知りました(笑)
あの老人は、言葉遣いに気をつけろみたいな事言っていたから、すんごいガンコおやじみたいな師匠が出てくるのかと思いきや、引退した大学教授みたいな方で、しかも、奥さんに頭が上がらないようで、微笑ましいですよね。面白い映画でした~。
by Catcat44 (2007-07-04 20:53) 

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