SSブログ

叙事詩の憂鬱 【ベオウルフ】 [映画日記<2007年>]

「ベオウルフ」を見たよ!

フロースガール王(アンソニー・ホプキンス)の治める古代デンマーク王国。
彼らの生活は、グレンデル(クリスピン・グローバー)という怪物により脅かされていた。
ある酒宴の夜、グレンデルは館を襲い、たくさんの人が殺されてしまう。
そんな王国に、一人の勇者が部下を引き連れ現れる。
彼の名はベオウルフ(レイ・ウィンストン)。
そして明言通りグレンデルを見事退治してしまうのだった。
ところが、息子グレンデルを殺された怪物の母(アンジェリーナ・ジョリー)は、ベオウルフを許さず、彼の部下を皆殺しにしてしまう。
ベオウルフは、一人、グレンデルの母に立ち向かう。
洞窟、グレンデルの母と対峙するベオウルフ。
ところが、グレンデルの母は世にも美しい姿を現すと、ベオウルフを誘惑、とある取引を持ちかけるのだった。
そして、ベオウルフの取った行動が、彼を呪いへと導いてゆく・・・

「ベオウルフ」は、現存する最古の英語叙事詩。
それを映画になるように、解釈され脚本化された訳だけど、
そもそも、その古代叙事詩自体がそうなのかもしれないけど、
どうもスッキリしないんだよなぁ。

怪物に怯えていた古代デンマーク王国に勇者ベオウルフが現れ、
すぐに怪物グレンデルを倒し、
そのせいで今度はグレンデルの母の怒りを買い、
退治しに行ったは良いが、逆に美貌に誘惑され、子を残す事と引き換えに、王位や富や名誉を与えられる。
長い王位を謳歌した果てに、結局は前王も同様であったのだけれど、
グレンデルの母からタイムアップをくらい、
再び怪物の脅威にさらされ、しかもその怪物は、母に誘惑されてしまった自分の子で、
再び、怪物と、そして自分自身の過去の過ちと対決しなければならない、
というお話なのだけど。

なんとなく辻褄が合わないというか、すっきりしない部分は、
古代人の教訓になるのだろうけど、
英雄であろうとも、美しさの誘惑に勝てないとか、
富や名誉には勝てないとか、
どんな人物でも、欲には勝てない、だからこそ、勝たなければならない、
ま、そういう事なのだろうけどさ。
これって、冷静に考えたら、過去から未来へ続く、欲の連鎖で、
みんな自業自得の罪で、
何故それが英雄伝なのか、
根本からして、納得できていないんだわね。私。

性、富、名誉、
結局全て、抗えないんじゃん。

しかも、怪物の母は何故、タイムアップの期限付きなんだろう。
これって、欲に負けていい思いをしたものは、
いつかはその報いを受ける時が来るって、やはり教訓なのかしら。
そもそも、この母のタイムアップがなければ、物語の後半はなくなってしまうのだから、母の気まぐれは教訓なんでしょうね。
盛者必衰の理、なのかしら。

さらに言えば、
グレンデルは前国王が誘惑に勝てず、怪物の母と取引してできた子で、
その姿の醜さから、クリーチャー好きにはたまらないのかもしれないけど、
それなら、どうして、ベオウルフが前国王と同じ過ちを繰り返したのに、
彼の子は、美しいドラゴンなのか。
これも、納得できない。
主役だからだよ、って言われたら終わりなんだけどさ。

叙事詩なんて、そんなもの?

ついでに言えば、
主演はベオウルフを演じたレイ・ウィンストンなのに、
宣伝は相変わらず、大々的にアンジェリーナ・ジョリー。
また、主演が置いてけぼりだ。

影の主役と言えば、アンジェリーナ・ジョリーが演じたグレンデルの母なのだろうけど、
やはりベオウルフありきの、怪物であり、
この母イコール人を惑わす欲、なのだから、どんなに美しくても、人気があっても、演技力があっても、
母役は“影”の主役でなきゃ。

以上の事が、私がスッキリできなかった理由。
英雄なのに、俗っぽ過ぎなのよ。
でもこれって、古代の叙事詩をどう解釈するかにもよるのだろうし、
研究家が大勢いるのだろうから、スッキリしないからと言って、一概にダメとは言えないし、
脚本家のせいだけじゃないだろうし、
この映画における表現と、個人的見解がかみ合わなかった、て事だよね。きっと。

あと、これも触れない訳にはいかなくて、
映像が、CGではないのだけど、実写と3Dアニメ、その中間のような作りになっている事。
俳優たちのパフォーマンスキャプチャー・データを用いた、新しい映像作り。
俳優たち本物そっくりでありながら、決定的に違う人物。
これは最後まで、ずっと不思議な感覚が消えなかったな。
「300」より、データっぽかったよな。
ファイナル・ファンタジーを、もう少し実写に近づけた感じって言うのかな。
この映像も、賛否分かれそう。
ともすると、ウソくさくなる時もあり、
でもその効果が、戦闘シーンや、クリーチャーに対して、最大限に発揮されていたとも思う。
人物に関しては、まだまだぎこちなさが残っていたように思う。
でも、背景とかは、ほとんど気にならないし、逆に効果的な部分もある。
これから、こういった類の映像が増えるのかしらん。
悪い事じゃないけど、使い方を間違えると、ウソくさいし、子供だましみたいになりかねないから、良い方向に進んで欲しいな。
SFやファンタジー向きでしょうね。

見ている時はそんなに感じなかったけど、いざ思い出して、何か書こうとすると、上に書いたようなマイナスの要因しか思いつかなかったりするのは、なんでだろうね。
アンジーのオーラに、レイ・ウィンストンが勝てなかったからかな?
アンソニー・ホプキンスやジョン・マルコビッチ、ブレンダン・グリーソン(歴史コスチュームものには欠かせない方)とか、いい役者さんはたんさん出演しているのにな。
ロバート・ゼメキス監督も、有名人だし。
そういう意味では、もったいないのかしらね。
もうちょっといい感じになりそうなのに、その手前、みたいな。
そのもうちょっとが、難しいんだけどねぇ。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 2

こんばんわ!
もう観たんですねぇ~
でも納得がいかなかったご様子ですね。
私も観たいと思っているのですが・・・
主演の俳優さんは全然しらないんですけどね。
by (2007-12-15 19:44) 

Catcat44

little_snowさん、こんにちわ!
見ましたね~。納得できなかった訳じゃないのですが、感想書き始めたら、文句が出るわ出るわ。
という事は、やっぱり納得できてなかったって事なのでしょうか。
なんだか主役のレイ・ウィンストンが小粒に見えてしまい・・・(苦笑)
by Catcat44 (2007-12-16 16:04) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。