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人を許す心 【インビクタス】 [映画日記<2010年>]

「インビクタス」を見たよ!

南アフリカ。
1990年、28年ぶりにネルソン・マンデラが釈放された。
1994年、彼は南アフリカ初の黒人大統領となる。
依然残るアパルトヘイトの影。白人と黒人の対立。
人種による差別、経済格差をなくす為に尽力する彼が注目したのは、同国で開催されるラグビーのワールドカップ。
そこで彼は、国の恥とまで言われた弱小ラグビーチームを、ワールドカップで優勝させようと考えた。
そこで彼はさっそく、白人でキャプテンのフランソワ・ピナールをお茶会に招いたのだった・・・。

いやー、参った。
これを撮ったクリント・イーストウッド監督の手腕にも、だけど、この作品には原作があるようだけど、全て事実である事、たかだか15年ほど前の事、という事にもね。
この作品に感想を書くなんておこがましい気もするけど、でもいつも通り、書きましょうか。

ネルソン・マンデラ氏の名前はもちろん知っていたけど、おそらくとても渋い作品なんじゃないかと勝手に想像していて、とっつきにくいと思ってたの。
でも、映画館で予告編を見たら、なんだか見たい気分がむくむくしてきて、行って良かったよ。
久しぶりに、「良い作品」を見た、と思ったから。

ストーリーに関しては、とやかく言っても、事実であるので意味がないので、言いません。
でも、この事実を、人種と差別や経済格差、国の政治に関わる難しい問題を孕みながらも、映画自体はラグビーのワールドカップで、いかに南アフリカシームが勝ったか、というエンターテイメントに徹した、娯楽作品に仕上がっているところが、監督の技術なのだな、と激しく思ったわ。

ネルソン・マンデラ氏という人は、すごい方。
映画を見れば見るほど、その人柄というか、考え方というか、人を導く、それまでの既成概念を根底から覆す、という偉業をなしどけた方というのは、こういう方なのか、と感心しかり。
でも、そんな世界の英雄を、この映画では、英雄らしくは描いていないと思う。
淡々と、地味に、公務を果たす彼を、モーガン・フリーマンが味のある存在感で演じていて、その派手さがないところが、とても好感がもてる。
決して、ヒーローじゃないの。
ばったばったと敵を倒したり、出陣前の演説なんか、決してしないから。

それは、ラグビーのキャプテンを演じたマット・デイモンもそう。
決して、派手な存在じゃない。
口数も少ないし、チームメイトの前で、仰々しい演説をぶったりもしない。
マンデラ氏の代弁もしない。
静かにマンデラ氏の考えに賛同し、理解し、行動する。
本人が、本当にそういう方だったのでしょう。
何もいう事ありませんよ。ホントに。

さらに好感を持ったのは、観客に対し、「ほら、すごいだろう、感動するでしょ?涙がこぼれるでしょ?」と、押し付けがましい感動シーンを作らなかった事。
この演出はさすが。
感動するシーンは、たくさんあるのよ。
大統領警備につく白人黒人混合チームが、いつの間にか心を通わせるようになったり、メイドの黒人が、雇い人の白人と一緒に並んでラグビー観戦したり、黒人の少年が白人のおっさんと一緒にラグビーの中継をラジオで聞いていたり喜んだり、とかね。
だんだんとチームが勝ち進んでいくにつれ、いままで対立しかしていなかった黒人白人が、なんて事ない、隣人同士のように、語り合ったり、喜んだり、手を取り合ったりするの。
ほのぼのしていて、微笑ましくて、つい涙腺が緩みかけてたりするのよ。
でも、長く感動をひっぱらない。
短いシーンのつなぎ合わせてで、感動がぐーっと高まる前に、次のシーンへ移ってしまって、あれあれというまに、次のシーン。
で、また次の感動が盛り上がりすぎる前に、次のシーンって具合いにね。

人々の気持ちの移り変わりを、ラグビーに託したのは、すごい考えだと思うわ。
だって、国の代表が勝つって、やっぱりすごい感動するし、興奮するし、国の仲間意識をすごく刺激するでしょう。
だからオリンピックは国の代表なのだし、WBCだって、仕事の手を休めてワンセグで試合見てたもん。
南アフリカのラグビーチームに、白人は夢中になり、黒人は嫌っているという事実から、白人も黒人も、国のチームとして一緒に応援できるチームにしてしまったのだから、手段の大切さというのかな、ものはやりよう、なのだなと実感させられるわ。

見終わった今、一人だけ、黒人の代表選手がいた、という事すら、奇跡のように感じるよ。

作品のセンスがすごい。
この作品に対する感想が、「すごい」の連発になってしまうのはとても申し訳ないけど、ご都合主義とか、やりすぎ、という批判ができないところが、またすごい。
だって、事実だもん。

これ、強いなぁ。
事実。
もちろん、エンターテイメントの作品としての演出はしているけど、ウソや作り事はないのだから、やはり人が考えて作り出す物語より、事実は無敵だね。

マンデラ氏を演じたモーガン・フリーマンは、なんと本人のマンデラ氏が、もし自分を演じるなら、と、名前を出したのだそう。

ちなみに、この1995年ワールドカップの優勝が南アフリカで、準優勝は強敵ニュージーランドなのだけど、このニュージーランドと対戦した日本チームは、最多得点(日本からしてみると最多失点)という記録があるらしい。

久々に人に薦めたくなった映画だわ。
何より押し付けがましくないところがいい。

作品中、印象深い言葉が、いくつか出てくる。
そのほとんどは、マンデラ氏が、自らの支えとして大切にしていた言葉。
詩の一説だったり、歌だったり、
タイトルの「インビクタス」も、詩のタイトルで「征服されない」という意味なのだそう。
「人を許す心」、この映画から学べます。

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