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巧妙な仕掛け 【ラッキーナンバー7】 [映画日記<2007年>]

「ラッキーナンバー7」を見たよ!

公開間もない作品なので、読む際にはご注意を。

いつもなら、ネタバレ気にしない私なのに、
見に行く前日、とある方のレビューを読んだら、
主演のジョシュ・ハートネットと、監督のポール・マクギガンは、
「ホワイト・ライズ」でコンビを組んだと書いてあって、ビビッときた訳だ。
そうか、これは“アレ”だ。
なら、ネタバレは見ちゃいかん・・・

車で、銃弾2発、撃ち殺された男。
事務所のデスクで、何か投げつけられ殺された男。
空港のロビーでは、車椅子の男に、昔の八百長競馬の話を聞かされた男が、死んだ。
友人ニックの部屋で目覚めたスレヴン(ジョシュ・ハートネット)は、
強盗に持ち物を取られた際、殴られた鼻を、気にしていた。
そこへ、勢い良く入っていたのは、隣人のリンジー(ルーシー・リュー)。
砂糖を借りに来た彼女は、ニックの部屋にいるスレヴンに、興味津々。
ニックの行方を捜そうと、スレヴンに持ちかけるのだった。
ところが、スレヴンは、
シャワーあがりのバスタオル一枚の姿のまま、何者かに連れ出される。
連れていかたれのは、ギャングの“ボス”(マーガン・フリーマン)の部屋。
借金を返せと言う。
身に覚えのないスレヴンだが、どうやら部屋主のニックの借金らしい。
そんな事お構いなしに、返済をせまる“ボス”。
金が返せないなら、3日以内に、敵対するギャングの頭、ラビ(ベン・キングズレー)の息子を暗殺しろとせまる。
“ボス”はラビ達に、息子を殺されたばかり。
ようやく帰されたスレヴンだが、
今度は、そのラビの前に連れて行かれ、
やはり借金を返せと言う。
これまたニックの借金。
借金と暗殺。そして人違い。
スレヴンの不運は、どこまで続くのか。
“ボス”とラビ、どちらの陣営にも顔を出す、凄腕の殺し屋グッドキャット(ブルース・ウィリス)とは何者か。
スレヴンとリンジーの出会いは、進展するのか。
一見、関係なく思える出来事が、やがて一つの終着点に結びついてゆく・・・

他の方のレビューにも多く書いてあったのだけど、私にも書かせて。
この邦題「ラッキーナンバー7」
ただの語呂合わせのつもりなら、ムシしても全然かまわないよ。
原題は「LUCKY NOMVER SLEVIN」
「ラッキーナンバースレヴン」これが大事なの。

映画雑誌を読んだ時、「ラッキーナンバー7」と「ディパーテッド」が比べられてたんだけど、
その時の紹介が、B級クライムサスペンスみたいな書かれ方で、
これにはまんまと騙されたよ。
「ディパーテッド」が正統派なら、「ラッキーナンバー7」は飛び道具?
いやいや、そんな事ありません。
出演者は豪華だし、B級なんて書かれると、軽いノリのサスペンス娯楽作みたいに思えちゃうけどさ。
これは、正統派の“復讐劇”

冒頭に書いた“アレ”とは、
つまり最初のうちは、見せ掛けの展開で進んでいって、
本当の目的が明かされるのは、物語がかなり進んでからって事。
主人公の素性も。
脇役達の役割もね。
それを“ドンデン返し”というのか、“オチ”というのかは、どちらでもいいけど。

最初、物語に脈絡のない殺しが、続く。
車と事務所と、空港。
いづれは結びつく殺しなのだけど、
見ている私たちは、最初、この展開が何なのか、さっぱり分からんのだよ。
それと、車椅子の男が語る、昔の八百長競馬もね。
この八百長競馬。
薬物違反の馬を走らせて、その情報を仕入れた男が、大金を賭けて、
結局は大損こいて、しかも八百長の見せしめにされて、
妻、息子共々、殺されてしまうんだ。
この競馬の話は、全ての始まり。
おざなりに見ていると、後で後悔するはめになるかも。

そんな冒頭部分と、全く関係なく、
いや、本当は関係ありありなのだけど、
関係ないように、スレヴンが登場するんだよ。
彼は、不運な男として、スクリーンに登場する。
仕事もクビ。
恋人とも破局。
友人を頼ってニューヨークに来た早々、強盗に身分証まで盗まれて、さあ大変。
着いてみれば、友人ニックすら、とんずら。
バスタオル一枚で、対立する2組のギャングの間を連れまわされるのは、ちょっと滑稽。
しかもジョシュのギャランドゥが・・・(以下、自粛)
隣人リンジーとの掛け合いも、テンポよく楽しい。
ルーシー・リューが、天真爛漫な、カワイイ女性を演じているよ。

双頭のギャングもまた、いかにもな感じ。
“ボス”とラビ。
かつては友情を育んだ二人なのに、
今は、向かいのビルの最上階で、
防弾ガラスの箱から、出てこれない。
それでも、対立しあう二人は、“ボス”の息子が殺された一件から、停戦が破られたばかり。
人違いと借金から、スレヴンはちょー不運にも、
“ボス”とラビの争いに、偶然巻き込まれたように、思える。
ちょっとなんか変じゃない・・・くらいは感じるけど、
その強引な持っていき方で、押され通されちゃった気分だよ。

しかし、これは、正当派な“復讐劇”。
カギを握るのは、両陣営に顔を出す、グッドキャットという殺し屋。
演じるブルース・ウィリスの不適な笑みが、何かあると思わせているよ。
最初っから変な感じで怪しいのは、このグッドキャットだけかな。
グッドキャットとスレヴンの関係が、明らかにならない限り、
グッドキャットは怪しい殺し屋のまま、
スレヴンは、不運な男のまま。

それが明かされるのは、ラスト3分の1くらいになってからだよ。
そこまでの引っ張りが、結構しつこいから、真実を待たされているこちらとしては、待てるギリギリな気がしないでもない。
スレヴンが、“ボス”に言われた、ラビの息子暗殺を、結構あっさり承諾しちゃうから、
なんか変な違和感はあるけどね。
いよいよ、真実の発表の時。
真実は、徐々に明かされるのではなく、
結構パシパシと、スピーディに分かるので、これは快感だ。
スレヴンが、“ボス”とラビ、
二人を椅子に縛り付けて、グッドキャットと登場した時には、
「よぉっ!待ってました!」と、声かけたかったくらいだよ。

スレヴンと名のった男。
彼がなし遂げたかったのは、無残にも殺された、彼の両親の復讐。
八百長競馬の見せしめとして殺された、彼の父。
そして、母。
そして、自分。
殺し屋と二人きり。
そこで殺されるはずだった彼は、殺し屋の気まぐれか、はたまたヤキの回った殺し屋の良心か、
彼は殺されずに、その殺し屋と逃げだのだ。
月日は流れゆき・・・
八百長競馬の当時の親だった、“ボス”とラビ。
ノミ屋に、母親を殺した男。
スレヴンは、全てのものに、復讐を果たす。
手を貸したのは、
当時、彼を殺さなかった殺し屋、グッドキャットだった。
そんな元凶の元、
八百長競馬で、薬物投与された馬、
結局は馬も騎手も、痛い目にあった訳だが、
その馬の名は、“ラッキーナンバースレヴン”だった。

スレヴンとグッドキャットは、不思議な関係。
少年だったスレヴンを、殺さず、逆に育てたのは、グッドキャット本人でしょうね。
とてもバーチャルな親子みたい。
自分以外、何者の信用しないように見えるグッドキャットが、
手放しでスレヴンだけは、信用しているよう。
そんな息子が、グッドキャットに、一つだけウソをついたんだ。
それは、リンジーの事。
計画では、リンジーも殺すはずだった。
でも、スレヴンは、リンジーに、間近いなく恋をしたらしい。
彼女に計画を話し、グッドキャットに殺されたとみせかけて、
実は、二人、姿を消そうとしていたんだね。
そんな二人の前に現れるグッドキャット。
居場所を知られたスレヴンは焦るが、
グッドキャットは、少しだけ微笑んで、二人の前から去る。
これって、親離れ子離れか。
バーチャルな親子だった二人の、自立の時なんだね。これって。
復讐を見事果たしたスレヴンは、
愛した女性と二人、新しい道を歩き出す。
なんか素晴らしい青春映画みたいじゃないか。
本当は、相当巧妙に計画された、復讐劇だけど。
ニックという存在を作る為だけに殺された彼は、とんでもない貧乏くじを引いた訳だ。
復讐に関係なく殺されたのは、ニックだけだもんね。
ニックは、“ボス”とラビ、両方に借金があった事が、運の尽きだ。

今作の仕掛けは、楽しかったよ。
最初はあまりにも脈絡のない展開に、冒頭の映像を忘れそうになってたけど。
最初、ちょっと滑稽に思えたスレヴンの表情が、
復讐を成し遂げたラストには、少し寂しげに見え、
でも、リンジーと二人でいる彼は、とても楽しそうだった。
でもって、グッドキャットの思わぬ親心が、以外で良かったよ。
スレヴンの為に、タダ働きだもん。
子を思う親そのものだったのも、以外だよね。
なんであの時彼を殺さなかったのかってのは、きっと永遠の謎だ。
でも、謎の方がいい。
ま、つまりは、面白かったって事だよ。
同じコンビで撮った「ホワイト・ライズ」よりね。
「ホワイト・ライズ」は、後味が良くなかったから。
リンジーの件だけは、息子に出し抜かれた親グッドキャットだけど、
演じるブルース・ウィリスの、あの何でも悟ってしまった後のような、達観した微笑みが、カッコ良かったなぁ。
父の形見の時計を大事にしているスレヴンだけど、
グッドキャットと彼の、20年以上にも渡る二人きりの生活を、なんとなく想像してみると、
これまた楽しい・・・気がするなぁ。
スレヴン、そう名のった男の、本当の名は、なんだったのだろうね。
これも、また、謎の方がいい。


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コメント 2

non_0101

こんにちは。
> そうか、これは“アレ”だ。
私は『ホワイト・ライズ』は未見なのですけど
見たことがある人にはピンと来るのですね。
ラストの謎解きは、かなり面白かったです。
ボスとラビを監視している警官までもが…というのはびっくりでした。
ジョシュ・ハートネットとブルース・ウィリスはいい感じでしたね~
今年はそれぞれの公開作が決定していて、ちょっと楽しみです。
by non_0101 (2007-01-28 09:43) 

Catcat44

「ホワイト・ライズ」は後味の悪い作品だと思ったのですけど、「ラッキー・ナンバー7」は、すかっとした気分になれました。
登場人物全員が、スレヴンと関係があったなんて、ちょっと驚きです。
ブルース・ウィリスの「ダイ・ハード4」は、期待大です!
by Catcat44 (2007-01-28 17:18) 

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