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もう一度、咲く 【ロッキー・ザ・ファイナル】 [映画日記<2007年>]

「ロッキー・ザ・ファイナル」をレンタル&視聴。

ボクシング界において、2度のベビー級チャンピオンに輝き、栄光の絶頂にいたロッキー・バルボア(シルベスター・スターローン)も、それは30年も昔の話。
数年前に愛する妻エイドリアンに先立たれた後は、イタリア・レストランを経営し、客に乞われるまま昔話を聞かせる毎日。
一人息子のロバート(マイロ・ヴィンティミリア)は、父の影に霞むのを嫌い、彼に寄り付こうとはしない。
何度目かのエイドリアンの命日。
ロッキーは昨年と同じように、エイドリアンの兄で親友でもあるポーリー(バート・ヤング)をつき合わせ、エイドリアンとの思い出の場所を巡り歩く。
その途中、懐かしいバーに立ち寄ると、昔、ロッキーに喫煙をたしなめられ、送ってもらった事があるという女性、マリー(ジェラルディン・ヒューズ)に再会する。
マリーや彼女の息子ステップスとの交流を楽しむかたわら、ロッキーには心にくすぶり続ける密やかな思いがあった。
もう一度、ボクシングを。
ロッキーが、再びプロライセンスを取得した事を嗅ぎつけたのは、現ヘビー級キャンピオン、ディクソン(アントニオ・ターヴァー)を擁する事務所だった。
毎度の瞬殺KO勝ちのキャンプに、世間は飽き飽きしており、
老獪ボクサーとは言え、かつての英雄とのエキシビジョン・マッチは、人気低迷のキャンプにとって、格好の話題作りで、ビジネスとしても大きなチャンスだったのだ。
かくして、現チャンプ、ディクソンと、かつてのチャンプ、ロッキーとの一戦が決まる。
リングはラスベガスのホテル。
あくまでエキシビジョンの豪華なスパーリングだと余裕なディクソンを横目に、
ロッキーは真剣に、かつ厳しい肉体作りに励んでいた。
果たして、ロッキーとディクソンの試合の結果は?
ロッキーは、心にくすぶり続ける思いを、吐き出す事ができるのだろうか・・・

ストーリー展開、ラストのオチまで分かっているのに、
どうしてこういうお話に、弱いんだろうね。
ロッキーを応援するしかないじゃん。
ロッキーに、賞賛の拍手を送りたくなるじゃん。
もう、製作陣の術中にハマりまくり。
それでも、心地良いのだけど。

過去の作品をちゃんと見た事はないのだけど、
冒頭から、ちゃんと年を取っており、一人孤独で、ぼそぼそと特徴的なしゃべり方なのだけど、
嬉しそうに過去の試合の話をするロッキーに、何か同情めいたものを感じちゃった。
かつてのライバルも、ただの老人で、ロッキーの店の居候状態だったりしてね。
何か、やりきれないもやもやを抱えていそうな感じ、それもちゃんと感じられた。
そのもやもやを、もう一度ボクシングで吐き出したいと、親友ポーリーに話し出すうち、涙が溢れてくるシーンには、分かってはいるのだけど、ヤラれるよな。

ストーリーを解説するまでもなく、
この作品には、いわゆるおじさん、細かく言えば、もう一花咲かせたい、人生、もう一度輝きたい、なんて思っている男性には、もう手放しで食いつくだけの見事なトラップが、たくさん仕掛けてあると思うんだ。

まず、死んだ女房をいつまでも愛し続ける夫としての、ロッキー。
まぁ、ロッキーと言えばエイドリアン、なのだろうけど、
亡くなって数年たっているのに、未だに墓参りを欠かさず、美しい赤いバラを手向け、
イスに座り話しかけるロッキー。
見ていて可哀想になるよね。
命日には、遠い昔の思い出の場所を巡り、しかも毎年同じ事をしていると、親友に呆れられても、彼にとっては、大事な時間。
思い出にすがって生きているのだけど、それでも普段家では肩身の狭い思いをしているお父さんにとって、
いつもでも妻を愛し、美しい思い出として大事にしているロッキーは、ものすごく羨ましく思えるのじゃないかしら。

これも考えれば、過去の栄光や思い出にすがっている事に変わりはないけど、
自ら経営するレストランに、昔のチャンプだった自身の写真を飾ったり、
エイドリアンの写真を飾ったり、
そもそも店の名前からして、“エイドリアンズ”だし、
ここまでくると、イタイなと思うのだけど、それでも客に乞われるまま、昔話ができるっていうのは、
なんだかとても羨ましい日々な気がする。

そして、新たな女性、マリー。
シングルマザーで、あまり素行の良くなさそうな一人息子を育てており、
彼女自身の生活も、たいして良いものではない。
そんな親子に、手を差し伸べるロッキー。
ともすれば、エイドリアンの穴埋め、と見える気もするけど、
それでもうぶなロッキーの、新しい胸のドキドキが聞こえてきそう。
少しやりすぎなくらい優しいロッキーだけど、無償で人を助ける潔さ、なんて、やはり憧れるのではないのかな。
世間一般のお父さんには、まず、できない事だろうし。

そして、いい具合いのトラップだなぁと思ったのは、ロッキー自身の一人息子、ロバートの存在。
彼は、父がいまだに人々の間で英雄扱いを受けている事に、ある種の嫉妬というか、
親の七光りや、親の影に霞んでしまうとか、
有名人を親に持った者の、宿命というべき問題に、すっかりヤラれており、
いい訳がましいのは、その先の展開で、全て効果になるのだけど、
ともかく、純粋で真面目で、挑戦する事に何の疑問も持たない父を、敬遠している息子なんて、
ベタベタでありがちで、何とかホイホイみたいなトラップだと思うよ。
でも、このトラップが、いい効果なんだなぁ。
私は男じゃないし、しかも子供もいないから想像だけど、
親なら、自分の栄光は子供にも誇りを持って欲しいし、
その栄光に、負けて欲しくないと思う。
自分はこれだけやったけど、自分の子供なら、それ以上の事ができるんじゃないかと、希望を持ちそうな気がする。
だから、最初は父を敬遠していた息子が、次第にロッキーの心を理解し、
ついには応援、セコンドについたりする姿を見ると、それそこ父と息子の理想像な気がしてならないよ。
男って、男じゃなくてもかもしれないけど、そういう気がする。

対戦相手は、現チャンプのディクソン。
彼も彼なりの苦悩を抱えており、彼の実力に見合う相手がいない事や、
事務所がビジネスにご執心だとか、
彼に良きアドバイスを送る事ができる、良きトレーナーは、事務所にはいなかったりでね。
普通に考えれば、現ヘビー級のチャンプだもの。
ちょっと鍛えたからって、ロッキーが勝てるとは、到底思えない。
でも、そこに、良きトレーナーがいない事や、彼自身がロッキーを甘く見ているとか、
エキシビジョン・マッチだから、鍛え方がゆるいとか、
そういう要素を持ってきたのは、上手いね。
もしかしたら、ロッキーが?と思えそうだものね。
ディクソンが悪者ではなく、苦悩する若者であったところも、ラストの清清しさに結びつくのだと思うな。
善人VS悪人じゃなくって、年の功VS若気の至り、だった訳だから。

結局は、ロッキーが自分自身に向き合う、というお話だったのだね。
選んだ方法が、ボクシングの復帰だった訳で。
若い頃、一度何かを成し遂げた事があると、
ある種の達成感みたいものを経験してしまうと、
それがいざなくなった時、非常にもやもやが溜まっていく気持ちは、分かるのだな。
なんだかシルベスター・スターローン自身にもカブるなんて、批評もあったくらいだもの。
人生枯れかけたおじさんが、もう一度頑張る姿に、すっかり惹きこまれてしまいましたよ。
まぁ、あえてうがった見方をすれば、
あり得ない復帰戦に、あり得ない試合展開、
ベタベタの人間関係に、全て上手くいくラスト、
でも、あり得ない、の一言で片付けてしまうには、もったいないくらいの、作品に仕上がっていたと思うよ。
陳腐な言葉すぎて恥ずかしいけど、ロッキーを見て勇気をもらいました、なんて感想、書きたくなる。
少なくとも、何かをしたいけど勇気がでない、キッカケがない、なんて悩んでいる方には、調度いいと思うな。
そうじゃなくても、なんだか勇気がでてくる気がするから、
落ち込んだ時なんか、また見たりしたらいいんじゃないかと、思うな。
そんな1本。

ロッキー・ザ・ファイナル (特別編)

ロッキー・ザ・ファイナル (特別編)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/10/05
  • メディア: DVD


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コメント 5

うつぼ

LICCAさん、こんばんは!
ロッキー、、見たことなんですよね~。
頑張るっていう雰囲気で既に敬遠してしまって。。
ここのところ還暦過ぎた俳優がゾクゾクと続編に出ていますね。ねた切れなのかと思いつつ、スタローンにかぶる、、、というあたり、チョッと観てみたくなりました。
わたくしも3連休はTSUTAYAレンタルで5本みて観疲れしてしまったのですが(アホですね)、また借りてしまいました5本。(もっとアホ)
書けそうだったら記事にしてみます。
で、タイトル変えたんですね。私と似ていたタイトルだったので残念~。
by うつぼ (2007-11-25 23:05) 

Catcat44

うつぼさん、こんばんわ!
確かに、イタイくらいポジティブ・シンキングな映画です(笑)
でも、60歳近いスタローンの姿が、もう殴られすぎたパンチドランカーみたいな顔で(スミマセン)、これがまたまた試合で殴られてボコボコで、でも負けない!みたいなところに、単純にハマってしまいました。
3連休5本は、お疲れ様です!
私は最近5本はキツイなぁ・・・
きっちり3本は見ましたけどね(笑)
3本目は感想が難しい作品で、上げられるか不安です(苦笑)

そうなんですよ、タイトル変えました。
前々から変えたい願望はあったのですが、急にその気になってしまいました。
まぁ、よくあると言えばよくあるタイトルだったので、そのあたりが理由なんですが、残念って言って頂けて嬉しいです~。。。
by Catcat44 (2007-11-25 23:32) 

Catcat44

DSilberlingさん、nice!ありがとうございます。
by Catcat44 (2007-11-25 23:34) 

Catcat44

maxyさん、ここに書いて頂いたコメントは、移動しました。
こちらへhttp://blog.so-net.ne.jp/naruyouninaru/2007-11-19
by Catcat44 (2007-11-26 01:37) 

Catcat44

mikaさん、ごめんなさい。コメントはこちらへ移動させて頂きました。
http://blog.so-net.ne.jp/naruyouninaru/2007-11-19
by Catcat44 (2007-11-27 22:23) 

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