SSブログ

「アリス」と「第9地区」 [映画日記<2010年>]

感想を書こうと思っていたのに、タイミングを逃してしまい、結局書きそびれた2作品。
やっぱり何か書いておきたいと思い、簡単にだけど、感想なぞ。
なので、あらすじは、今回は割愛。
あしからず。

まず、「アリス・イン・ワンダーランド」

いらずと知れた、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の「不思議の国のアリス」。
何やら、興行収入的には、ものすごいらしいね。

そんな鳴り物入りの作品だったのだけど、実のところ、それほど期待していなかった、というか、逆にここまで騒がれているけど、それはジョニデのおかげだったりするところが大きかったから、実のところどうなの?という疑問の方が大きかった。

で、実のところ。
ストーリー的には、それほど面白い作品ではありませんでしたね。
その割りに興行成績が良いので、面白い作品=収入的に成功、とは言い切れないのだな、とあらためて。

ストーリーは、取り止めがない感じで、最後まで突っ走っちゃう。
キャラクターの位置づけが中途半端というか、誰に感情移入して見ればいいのか、迷ってしまった感じ。
主人公は、果たしてアリスなのかマッドハッターなのか。
アリスのキャラクター的性格が結構あっさりなので、そのせいで感情移入しづらかったのかなぁ。
作品を通じて、アリスがワンダーランドでの経験を元に、現実世界でも自分の決断で生きていく、という成長物語なのだけど、そのアリスがどこを裂いても引っかからない、さらっとすーっとこぼれていってしまうようなキャラクターなのよね。
美人さんなのだけど。

そしてそれ以上に、マッドハッターがキャラが立っていて、アリスの隣に置いておくのはもったいない気もする。
どこか押さえているような感じがしたから。

この二人以外のキャラクター、という意味では、とても面白かった。
最初はヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王が、ものすごいキャラで、それが気になっていたけど、だんだん物語が進んでいくと、アン・ハサウェイ演じる白の女王の立ち居振る舞いの方が面白くなってきた。
あの天然な感じがたまらん、ってね。
チェシャ猫も白うさぎも芋虫の長老も、さすが、というか、良いキャラタクーしてた。

赤の女王、といえば、彼女は教訓的なキャラクターで、人と違う、醜い違い、を自分の中で認められない、また、周りもそれを個性やその人の特徴として認められない、マイノリティーやフリークに対する差別がそこにはあるの。
赤の女王は、それを嫌い、恐怖で人を支配しようとしてた。
自分の、たとえ醜い特長でも、赤の女王の場合は人の2倍以上も大きい頭なのだけど、それを受け入れ、周りの目を気にする事なく、そうすれば彼女もああいう結果にはならなかったと思うのだけど。
でも、白の女王が誰からも好かれる優しい王女であったのは、彼女が美貌に恵まれていたから。
美貌だと人に好かれる、醜いと人から嫌われる、という構図が、果たして本来の姿がどうか。
そういう教訓があったはずなのだけど、どうもストーリーが馴染まないせいで、すっきり入ってこなかったのが残念な作品だったわ。
たくさんの人が見た作品だけど、そこまで深読みして見る人は、多くないからなぁ。

これから見る方は、ちょっとだけでも、そういう教訓的な部分を見て欲しいな、と思った1本です。


続いて、「第9地区」。
エイリアンが出てくる、ピーター・ジャクソンが制作に関わった作品、という以外、予備知識がないまま、上映最終回にギリギリ滑り込みセーフで見てきました。

これ、映画賞にノミネートされる、絶賛された作品だって事、見て実感。
ものすごいメッセージ性の強い、ガツンと脳に残る作品でした。
グロさも込みで、ね。

まず、エイリアンが地球に・・・ってなれば、「インディペンデンスディ」みたいな、地球侵略を想像するのだけど、全く違った設定に驚き。

ストーリーはややドキュメンタリー風に進みます。
突如南アフリカの上空に現れた宇宙船。
そしてその中に乗っていたエイリアンは、実は宇宙船の故障で、地球の上空に止まったまま、立ち往生をしていただけ。
でも、言葉も違う、文化や習慣も違うエイリアンは、地球人にとっては未知の存在。

で、最初は、難民として受け入れていた政府も、エイリアンたちが住む地区がスラム化してくると、彼らを強制的に移住させようと、動き出すところが物語りが始まる。
この強制移住は、まるでナチス時代のゲットーみたい。

主人公は、この移住作戦の責任者。
民間企業なのだけど、とにかく武力を持った強制移住なので、軍隊がムリヤリエイリアンを排除しようとしているように見える。
一応、書類もあるけど、それをエイリアンたちが理解しているかは、関係ないからね。

で、この主人公は、偶然ある“液体”をかぶってしまった事から、DNAが人間からエイリアンのものに変化していき、見た目も段々とエイリアンみたいになってく、という、まるでホラー映画のような展開。

でも、ここで、ただグロいホラー映画になるのかと思いきや、またまた予想を裏切られる。
この主人公が、人間とエイリアンの“中間”である事が必要だったの。
この作品を物語る為に。

この主人公を中心に、ストーリーは展開していくのだけど、すると次第に、人間のエイリアンに対する差別や偏見、エゴや欲などが顕著に見られるようになってくる。
エイリアンの見た目は、登場人物たちは“エビ”って呼んでたけど、どちらかといえば“バッタ”ぽいと思った。
このエイリアンの見た目が良くない(あくまで人間の目から見てね)、というのはこれも必要だった事。
醜い=嫌悪、となりやすいじゃない。
余計に言葉も文化も習慣も違う生き物同士。
ゴミをあさり、よほど知的とは思えない行動を取るエイリアンを目の前にしたら、
人間が、自分たちの方が上、と勘違いしてもおかしくない状況を作り出している。
だから、エイリアンを“エビ”と呼び、見下している。
だから簡単に移住させようとするし、抵抗されれば殺してしまう。
主人公は、見下す立場から、見下される立場になってくの。
しかも、DNAのハーフという事で、その存在は研究対象にもなり、彼の存在は、あっという間に重要人物になる。
しかもエイリアンたちの武器が、エイリアンのDNAにしか反応しないってしうのも、その原因があったのだけどね。

そんな中、主人公は人間から逃げ続けながら、一人のエイリアンと出会い、その身体を治す、という目的を持って、彼が彼らの母船を動かすのに協力するようになる。

とは言っても、この主人公も、最初は人間の立場でエイリアンと接しているから、見下した態度を取り続け、何度も彼らを裏切る。
でもこの主人公に協力したエイリアンは、ちょっと他のエイリアンたちと違って・・・。

ようは、教養を持った、さらには息子を持った、常識的で紳士的なエイリアンだったの。
人間は、エイリアンたちを見下していたけど、実は知的レベルが低かった訳じゃない。
一部はそうだったかもしれないけど、少なくとも宇宙船を操縦できるものもいたのだから、その知的レベルが低いはずがない。
実際、その操縦シーンは、まるで高度な技術を持ったSF映画に出てくる宇宙船みたいだったから。

このエイリアンは、何度も何度も人間にひどい仕打ちを受けるのに、決してこの主人公を裏切らなかった。

最終的に、主人公は、このエイリアンと3年後、身体を治す約束をしたまま、彼を逃がす為に、人間と戦い続ける。
3年後、このエイリアンが帰ってくる保障はない。
でも、最後には、この主人公は何が善で何が悪なのか、悟ったのではないか、と思わせる。
エゴ、欲丸出しの人間に対し、終始真摯な態度で接していたこのエイリアン。
どちらが本当の“心”を持った存在だったと言えるのか・・・。

強烈なメッセージは、エイリアンのグロテスクな外見とともに、記憶にガツンとやられました。
外見と心のギャップ。
それを分かりやすく見せる為のキャラクター設定なのだけど、なかなかの強烈具合に、しばらく頭から離れらなかったわ。
さすが、ピーター・ジャクソンが制作をしたかった理由が分かったよ。
元々は、無名映画監督の短編作品だったらしいよ。
それを長編とする時に、ピーター・ジャクソンが関わった、という事らしい。
彼の、WETAが関わる事で、映像的にもなかなか良くできてる。
わざと、わざとらしい映像にしていると思うよ。

くしくも、表現は違えど、「アリス」も「第9地区」も外見と偏見をテーマに持った作品だったね。
もちろん強烈なのは後者だけど、見る人もいろいろなのだから、その度合いもいろいろあっていいのだろうね。
「第9地区」は、かなりグロいけど、大丈夫な方には見て欲しい。
悪人、善人、な対極的な描き方をしている訳ではないけど、何が大事なのか、思い知らさせれるから。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 2

non_0101

こんにちは。
そうそう、「アリス」は期待していたほどの面白さはありませんでした~
面白くなかった訳では無いのですけど(^^ゞ
キャラクターと映像が楽しかったです☆

「第9地区」は…あの宇宙人に対する差別的な悪意がちょっとしんどかったです(^_^;)
でも、続きが気になります~☆
by non_0101 (2010-06-19 10:40) 

LICCA

nonさん、こんばんわ!
「アリス」はストーリーより、あのキャラを楽しめばいいんだって途中で気づきました。
「第9地区」は、夢に見るかと思いました。見ませんでしたが(笑)
あれ、やはりダンナなんでしょうね。きっと。
by LICCA (2010-06-21 23:20) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。